VIATRIS

軽症喘息≠軽い喘息

監修

東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科学 准教授 勝沼 俊雄 先生
獨協医科大学医学部小児科学 准教授 吉原 重美 先生

軽症喘息は“かるい喘息”ではありません

小児気管支喘息の長期管理では、ロイコトリエン受容体拮抗薬や吸入ステロイド薬などの抗炎症薬によって良好なコントロールが得られていても、気道感染などの誘発因子をきっかけに症状は絶えず変化し、急性増悪を来すケースは少なくありません。
たとえ「軽症」であっても、重篤な喘息発作を引きおこす可能性があるため、適切な長期管理の重要性が指摘されています。

小児軽症喘息を放っておけない5つの理由

理由その1 患者数が多い

小児気管支喘息の重症度は、間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型に分類されます。
喘息患児400名を対象としたランダム電話インタビュー調査によると、その割合は軽症持続型が26%であり、間欠型を含めると「軽症」以下が約8割を占めています。

理由その2 病態が過小評価される

喘息患児や保護者の主観によって喘息コントロール状態を5段階で評価したところ、完全もしくは良くできていると回答したのは、中等症で41%、重症でも35%であり、症状があっても「コントロールできている」と評価されています。
患児や保護者の自己評価と、重症度分類による客観的評価との間にはギャップが認められ、病態が過小評価されていることが示唆されます。

理由その3 喘息死に至ることがある

オーストラリアにおける調査によると、喘息死に至った患者(20歳以下)の生前の重症度は、軽症、中等症、重症のいずれもほぼ同じ割合でした。
また、日本小児アレルギー学会・喘息死委員会による調査においても、同様の結果が得られています。
このことから、重症度と死亡率との間には、因果関係はないことが示唆されます。

理由その4 成人後も症状が継続する

喘息患児の長期予後調査によると、小児期(7歳時)に軽症(喘鳴を伴う気管支炎)であっても、約4割の患児が成人後(42歳時)も喘息症状を有することが認められました。

理由その5 気管支の収縮によって、気道リモデリングが誘発される

成人喘息患者48例を対象に、気管支の収縮がその構造変化に及ぼす影響を検討した吸入誘発試験によると、炎症を伴わない気管支収縮(メサコリン吸入)によって気道リモデリングが誘発されました。
喘息長期管理において気道リモデリングを防ぐには、抗炎症治療だけでなく、気管支の収縮を抑えることも重要と示唆されます。

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